HOTEL MEXICO "Her Decorated Post Love" Special Interview

New HouseとTurntable Filmsに続く若きバンド・アクトとして、Second Royalレーベルが送り出した、京都を拠点とする6ピース、Hotel Mexico。彼らが、2010年にリリースされたファースト『His Jewelled Letter Box』以来となる、セカンド・アルバム『Her Decorated Post Love』を2月6日にリリースします。今作では、結成当初のチルウェイヴ・サウンド、それ以降にダウンロードなどで発表してきたローファイ・ポップともまた異なった、バンドの更なる境地を開拓。端正にまとまったバンド・アンサンブル、ロマンチックなムード。新しいHotel Mexicoでありつつ、これまでで最もバンドの自然な魅力が音源化された傑作です。

この稿では、3回にわたって、メンバー6人全員によるインタビューを掲載します。まず今週は、前作リリース以降のバンドの動きをおさらい。次週以降も、ニュー・アルバム各論を尋ねた第2回、バンドそのものを掘り下げた第3回と続きます。ゆっくりとお付き合いください。
Interview & Text by 田中亮太
前作のリリース直後の話からなんですが、Hotel Mexicoはライヴの本数を多くしたり、やおらに露出を増やしたりせず、プロモーション面ではあえて積極的には動いてなかった印象です。そのあたり意識的だったんですか?
菊池
ライヴのブッキングはちょくちょくあったんですけど、あえて断ったりもしてて。僕ら自身が国内のバンドにあまり惹かれないってのもあったし。国内のシーンでは、Cuz Me Painくらいしか共通してると思えるところがなかったんですよね。
伊東
前作を出したくらいは、1本ごとのライヴを失敗できないって意識が強かったんですよね。裏を返せば自信のなさでもあったとも思うんですけど。出るライヴを1本1本考えて、1回のパフォーマンスを絶対成功させなきゃって思ってましたね。今はある程度自信もできたので、少しばかしアウェイの環境でも出てもいいんじゃいかって考えるようになりましたが。
水島
確かにあの頃のライヴ1回を落とせない感はすごかったですね。1本ライヴやったら1つステイタスを上げなきゃいけないって全員が意識してました。ただ、意識的に露出を減らしたことにより、1回ごとのライヴの注目度が上がったのは良かったです。5,6回しかライヴをやってない段階で、「へーメキシコがライヴするんだ」みたいな反応があったりとか。そこはうまくいったんじゃないかな。
やはり、結成当初は国内よりも海外でってところに目を向かれてました?
伊東
自分たちが海外のインディ・バンドを聴いて良い!ってなっているのと同じような姿勢で、海外のリスナーたちが僕らのことを良いと思ってくれればいいなとは、最初から思っていました。
水島
日本でどういう足場にしていくかってのは話し合わなかったですね。極端に言えば、そこをすっとばせればいいなとは思ってました。だから最初はそこを見ないふりをして(笑)。ただ結局活動しているのは日本で、セールスのほとんども国内なわけで。
そうしたなかで、国内での活動に対する意識にも変化がありました?
伊東
ライヴで盛り上がってくれるファンや、ネットで僕たちのことをよくつぶやいたりしてくれてる人がいたりってのは、あ、日本でもこんなに聴いてくれてる人がいるんだなっていう感慨はありましたね。ただ、海外志向ではあったんですけど、なにがなんでも海外に飛び出て行って、ドサ周りしてめっちゃ苦労してってのはちょっと違うかなーって話はしてました。だから、日本でもちゃんと地盤を作っていくっていう意識は、次第に出てきましたね。
では、バンドのなかで前作以降に起きた大きな変化は?
岩本
やはりバンドとしては、1年くらい前から、(石神)龍遊さんと(伊東)海さんと僕で、町家を借りて3人で住みはじめたことですかね。そのあと菊池さんも加わって。そこで、バンドの関係性も変わってきたし、お互い苦手なところも知り合ったうえで、より親密になったり。最近はそうでもないですけど、一時期は毎日友達を呼んでパーティみたいな生活でしたね。
サウンド的には、Diesel:U:Musicで配信された"Dear Les Friends"あたりから、ギター・バンド化が進んでいった印象でしたが、その変化はどんなところが起因となってるんですか?
石神
バンドを始めた頃はNite Jewelとかに刺激を受けて、曲作りを鍵盤でやってたんですよね。マイクロコルグとかをいじってるのが楽しかった。ただ、そのモードが落ち着いた頃に、ギターも触るようになって。それから自然とギターの比重が増えてきた感じでしたね。鍵盤作業の休憩時間にギターを触ってたら、だんだんそっちがメインになってきたんです。
菊池
ただ、龍遊は大学の頃はギターで曲を作ってたし、驚きはしませんでしたね。最初のアルバムのほうが彼の曲としては異質なんだと思う。
水島
ギターのほうが曲作るの簡単って言ってましたよね。
"Dear Les Friends"はバンドのどんな側面をおさめた曲だったんでしょうか?
伊東
端的に言えばAriel Pinkの影響化にある曲ですよね。
水島
アルバムのあと出した"Do You Do You Haia"がしっとりした曲だったので、次はかます曲をやりたいってのはありましたよね。テンポが良くて攻撃的で、かつHotel Mexicoらしいアンセムを作るぞって。
伊東
僕らはやっぱり、今が何なんだってのを意識してるし、今このバンドが好きなものを反映した音楽を作りたいって思ってます。そのうえで、あの曲はAriel Pinkって大好きな影響が一番色濃く出た曲ですよね。ただ、"Dear Les Friends"みたいな曲で、アルバムを1枚作るわけじゃないってのは、バンドとして当初から思ってました。
実際に"Dear Les Friends"なり"A Space in the Loveless Field"なり、前作以降の曲をライヴで演奏することで、気持ちの変化はありましたか?
石神
やっぱりバンド感がでてきましたよね。
菊池
ファースト以降の曲は、それぞれのパートに曲を組み立てていく役割がありますよね。それまでの曲はわりとリフのループが多かったから、単純なものが多かったし。やっぱりバンドっぽいものは楽しいですよ。
石神
ライヴでモッシュが起こったりとか、ああいう現象が始まったのは、ファースト以降の曲をやるようになってからですよね。で、僕らもむしろそっちの反応に巻かれて、勢いのあるパフォーマンスになってきたと思います。チルウェイヴとして聴いてくれてた人のなかには、それが嫌で離れていった人もいるかもしれないですけど。
そうしたなかで一時京都を離れ福岡に住んでいた菊池さんが、また京都に戻ってきますが、時期的にはいつでしたっけ?
菊池
2012年の4月でしたね。京都にそのうち戻るってのは、離れた時から思ってはいました。それがどのタイミングになるのかはわからなかったですけど。
菊池さんの、遠距離にいてライヴにはほぼ参加できないながらも、紛れもなくバンドの一員というスタンスは、珍しいと思っていたのですが、やりづらさなどはなかったんですか?
石神
僕らの場合、この6人のひとりでも欠けたらもう解散って感じなんですよね。なので、自然となにも感じなかったし、アドバイスや意見をもらうことで、むしろ助かってましたね。新曲を聴かせて感想をもらったりとか。
菊池さんが戻っててから、ライヴ・パフォーマンスの面で変化はありましたか?
水島
それは完全にプラスですね。
石神
足りなかったところをやっぱり補ってくれてる。曲を作るときから、楽器のパートを多くできるし。
菊池
僕が帰ってきてやろうと思ったのは、各メンバーに対して一番客観的に見れる立場なので、スタジオに入った時にちゃんと意見を伝えるってことでしたね。その結果ライヴが良くなったって感想があれば嬉しいですね。
石神
バンド初期はチルアウト的な面を意識してたので、菊池が離れて音数が減るのは気にならなかったんですけどね。ただ彼の復帰で音数が増えることによって、やっぱり厚みや迫力が出るので、そこを打ち出していこうってのは思いましたね。バンドとして見せる感じというか。その結果、僕はもはやライヴで楽器を持たなくなってますけど(笑)。実際6人になって良くなったねってのは言われます。
2012年の春にはイギリスのインディ・レーベルDouble Denimから7インチ『A Space in the Loveless Field』がリリースされます。
石神
達成感ありましたね。やっぱり、めちゃめちゃ嬉しかったです。
菊池
海外リリースは目標の一つだったからね。
岩本
でも、すでに同じレーベルからJesse Ruinsが出してたから、2番目はちょっと嫌だなっていう本音もありますけどね。ただ、海外のレーベルから出したいってのはずっと思ってましたし、かつDouble Denimは好きなレーベルだったし、決まったときは素直に喜びました。そのあとに、あれよく考えたらJesse Ruinsも出てるやんって思って。で、(Jesse Ruinsこと)Nitesさんと話した時に、同じレーベルだねって。
小林
頬をそっと赤らめる感じで(笑)。
どういういきさつでリリースは決まったのでしょう?
石神
収録された2曲は、当初から海外からもリリースできるものっていうテーマで作ってはいたんですよね。で、Double Denimに送ったら、いい返事が戻ってきてっていう。
水島
海外リリースに関しては、できるだけ早く達成しておきたいというのが常にありましたね。でも、なかなか実現にならない、でもこのタイミングでリリースできないとマズイんじゃないか、もうダメだーみたいな空気もあった時に、リリースが決まって。あー良かったーって安心するところがありました。これからも同じモチベーションでこのバンドを続けていけるなって。話決まった時も、喜びのあまり飲みに行きましたしね。
海外レーベルからリリースしたことで、周りから反応はありました?
石神
特になかったですね。「すごいね」って言われるくらい(笑)。
そして、2012年の8月に初の海外ライヴをブルックリン2箇所でおこないます。
水島
海外でライヴをやるなら、海外リリースをしてからでないとと思ってました。ただ行ってやるだけじゃ意味ないと。で、やっと海外リリースが実現して、早く海外に行かなきゃ、でもなかなか決まらない、またあーもうダメだーとなったときに(笑)、ブルックリンでのライヴが決まって。
伊東
活動初期に1本のライヴを落としちゃいけないと思ってたのと一緒で、ただ海外に行って演奏をやれればいいってわけじゃなかったですからね。
水島
記念ライヴにはしたくなかった。
伊東
実は10月にイギリスでYeasyerの前座でってオファーもあったんですけど、僕らの都合があわなくて。だから、8月にブルックリンでっていう今回の形になりました。
石神
Twee Grrrls Clubのスミレちゃんが、海外の知り合いをいろいろ紹介してくれたりとか協力してくれましたね。
端的に言って、初の海外ライヴはどうでした?
石神
楽しかったです。帰ってきたくなかったよね?
伊東
うん。僕はライヴも含めてほぼ100パーセント不安だったんですよね。このメンツで1週間も海外にいて大丈夫かなって(笑)。
水島
うちはアホが多いので。ライヴをちゃんとできるとかだけじゃなくて、みんな入国審査に通るのかとか、会場までたどり着けるのかとか、海さんは一人で心配してましたよね。いつまでたってもパスポートもとりにいかないような奴らなので。早くしろ、早くしろって言ってんのに。
伊東
海外のライヴハウスって日本より機材もないし、他のバンドにスピーカーとかを借りる形でやらなきゃいけなかったので、ライブするまでは、ちゃんと音出せるのかもわからなかったですからね。でもやってみたら、あ、できるんやって思った。全然なんともないなって。そこが僕は楽しかった以上に大きかったですね。
2回のライヴは、それぞれどんな場所でだったんですか?
石神
Knitting FactoryってところとGlasslandsってところでした。Knitting Factoryは結構大きかったですね。で、GlasslandsはOuter Limits RecordingsやAriel Pinkとかもライヴしてるインディ・メインのところで。経営者が女の子2人で、ウィリアムズバーグってところにあるんですけど、そこは街全体としておもしろかったです。女の子の顔が広くて、いろんなアーティストと通じ合ってる感じでした。
水島
Glasslandsはインディの聖地みたいな場所でしたね。Knitting Factoryでの1本目のライヴは、一緒にやるバンドが友達のお客さんをたくさん呼んでって雰囲気だったから、そんなに音楽好きな人が集まってるって感じじゃなかったです。でも反応は良かったですよ。日本だと僕らのライヴに行く人は音楽好きが多い印象ですけど、こんなフランクな場でもうけるんだなって。
伊東
それは確かに。ぷらっとそこにいる人たちって感じだったもんね。
水島
特に黒人から反応がいいなって思いました。ご祝儀アンコールまでいただいちゃって。僕は1本目のところのほうがライヴは楽しかったですね。
実際に外国のファンやミュージシャンから感想を言われたりはしました?
石神
僕らを知ってて来てくれた人は少なかったと思うんですけど、すごい良かったって感想を言ってくれる人が多くて嬉しかったですね。Glasslandsでは対バンの外国人に楽屋ですごく褒められて、熱くハグされて。でも、そいつのバンド見たらクソダサかった。
一同
(爆笑)
菊池
でも、キーボードの女の子はすごくかわいかったですね。
伊東
ネットの評価だけだと現実味がわかなかったから、行って実際にライヴをやってみて、通じるってことをはじめて感じましたね。なんの反応もないってのを想像してたりもしてたので。
水島
音源だけでなくパフォーマンスの面で、良い反応や褒めの言葉をもらったのは、やっぱり自信になりましたね。
新作アルバムにつながるような、音楽的な刺激もありました?
石神
海外でライヴをすること自体は刺激的でしたけど、音楽的にどうこうってのは特になかったですね。ただ、僕らみたいな音楽をしてる以上、海外でちゃんと受け入れられなかったらやばいってのはあったので、行ってみてダイレクトに良いねって伝えてもらえたのはよかったですね。
自信にもなるし、やっぱり音楽自体の説得力が増しますよね。では、音楽を差し置いてブルックリンで楽しかったことは?
石神
ショッピングですね。 レコードや洋服を見てるのが一番楽しかったですね。ライヴにしきてるけど、ライヴだけじゃなかった。
菊池
間違いなくライヴ・メインじゃなかったよね(笑)
石神
ご飯とショッピングだよね。向こうで世話してくれた人たちもびっくりしてたんじゃないかな。こいつら買い物ばっかしてるなって(笑)。
岩本
あとは、クルージングしながらの、Teengirl Fantasyの船上ライヴを観たり。そこに偶然大阪のOZで一緒だったPicture Planeがいたりとか。どこかで見たようなインディ・ミュージシャンがいっぱい同じ船にいて、そういう経験はモチベーションになりましたね。ブルックリンの地元のバンドのライヴを観てると、演奏や音楽性って面では日本のインディ・バンドとさほど変わらないと思うんですが、なんかふだんの生活と音楽がより結びついてるというか。
小林
音楽もライフスタイルの延長って感じがしましたね。
岩本
そういうのはすごくかっこいいなと思いました。
小林
ライヴをしたあとに、屋上でパーティしたりな。
岩本
音楽を作るうえで音楽だけじゃない。そういう感覚には刺激を受けましたね。ブルックリンはほんと楽しかったです。Hotel Mexico自体が仲良いってのもあるんでしょうけど。
Vol.2に続く)

Her Decorated Post Love
XQGE-1037(SRCD-037) 1,890円(Tax In)
2013.02.06 Release
HOTEL MEXICO
2010年2月カセット・リリースされたデビュー・シングル『3 SONGS E.P.』、3月にVHS+T-SHIRTSセットは共に即日完売。4月に雑誌「SNOOZER」付録CDに楽曲が収録され、5月にはUKバンドThe xxの来日京都公演のフロント・アクトも務める。8月には発売前からPitchforkやFADERといった海外ミュージックサイトにも取り上げられ話題になったデビューミニアルバム『His Jewelled Letter Box』を限定店舗リリース後、2011年3月に全国流通&海外配信を開始。DIESEL:U:MUSIC独占での新曲公開、Vice magazineがデルとインテルの協賛で始動させた音楽映像サイトnoiseyにて密着取材を受けるなど話題を拡大する中、2012年UKレーベルDouble Denimから7インチ・アナログをリリース。レーベル・サイトにアップされた楽曲が3万回を超える試聴回数を記録した。2012年8月にはアメリカでのライブを敢行、11月初の12インチ・アナログ&ライブ会場限定CD『SELECTION』をリリース、東京発レーベルCuz Me Painとの合同イベントを定期開催するなど国内外多岐に渡る活動を展開中。
HOTEL MEXICO『Her Decorated Post Love』RELEASE TOUR
2013年2月10日(日)|新代田FEVER
LIVE: HOTEL MEXICO / THE BEAUTY / mitsume / NEW HOUSE
DJ: Nobuyuki Sakuma (Jesse Ruins)
OPEN / START 18:00 前売2,300円 / 当日2,500円 (ドリンク代別途)
※ローソン(Lコード:75602)
問い合わせ:FEVER(03-6304-7899)
2013年2月11日(月・祝)|名古屋Party'z
LIVE: HOTEL MEXICO / Homecomings / Soleil Soleil / Hot Hot Sex / The Moments
OPEN 18:00 / START 18:30 前売2,500円 / 当日3,000円 (ドリンク代別途)
問い合わせ:Party'z(partyz@radcreation.jp)
2013年2月15日(金)|京都METRO
Day Time
LIVE: HOTEL MEXICO / BO NINGEN / COMANECHI
OPEN 18:00 / START 18:30 前売:2,300円 当日:2,800円(ドリンク代別途)
※ぴあ(Pコード:190-198) 、ローソン(Lコード:51644)、e+ (http://eplus.jp/)
問い合わせ:METRO(075-752-4765)
Night Time
LIVE:HOTEL MEXICO / Jesse Ruins
DJ: HALFBY / Handsomeboy Technique / 田中亮太 / Yusuke Sadaoka(PAMS) / kikuchi(HOTEL MEXICO) / 小野真 / 小山内信介
OPEN 22:00 当日:2,000円(1ドリンク付)
問い合わせ:METRO(075-752-4765)
※18時からの"BO NINGEN × COMANECHI × HOTEL MEXICO"に参加の方はドリンク代のみで入場頂けます。
2013年2月16日(土)|松江B1
LIVE: HOTEL MEXICO / Jesse Ruins
DJ:kikuchi (HOTEL MEXICO) / YYOKKE (WHITE WEAR/JESSE RUINS) / NOBUYUKI SAKUMA (JESSE RUINS) / 2bn(PLAY ON)
OPEN 21:00 前売り2000円、当日2500円
問い合わせ:松江B1(0852-21-3467)
※各公演とも前売メール予約を ticket@secondroyal.com にて受付します。公演日、お名前と枚数を明記してメールして下さい。